当番世話人 三木 秀樹
宇治おうばく病院
全国のリワーク研究会の正会員施設は現在、200ヶ所に達しようとしています。リワーク研究会が設立された当初から何年間かは数えるほどしかなかった関西のリワーク施設が、今では会員施設だけで33ヶ所にまで増えているのも、研究会活動の成果や社会からの要請があってのものと考えています。また、関東にくらべると経済性が厳しい関西においてもリワークプログラムが発展してきたのは、精神科診療および産業医活動の中でその必要性が認識されてきたからだと言えるでしょう。
会員数が増え続けている当うつ病リワーク研究会としても、会員施設が提供するリワークプログラムの内容・質のばらつきを防ぐために、プログラムの標準化に取り組んできました。また各会員施設も、多様化する利用者に対応するためさまざまな創意工夫を行い、社会からの期待に応えてきました。しかし、内容的には充実していても、利用者数が伸びずリワークプログラムを継続するのが困難な施設が出てきているのも事実です。
本年次研究会では、リワーク施設やリワークプログラムの置かれている現状を今いちど見つめなおし、課題を掘り下げてその対応策をディスカッションすることで、「医療」としてのリワークプログラムを今後いかに発展させられるかについて考えてみたいと思います。
今回のテーマ「多様性のなかでの医療リワーク再考」
第10回という節目を来年迎えるにあたって、第9回目となる今回は、多様化し続けるリワーク支援の現状を明らかにして、医療リワークの強みや弱みを共有する機会としたいと考えています。
1.復職支援を提供する施設の多様化
リワークプログラムはこれまで、おもに私たち医療機関か、公的機関である障害者職業センターが実施してきました。それが現在では、福祉系機関(就労支援事業)が「リワーク支援」への参加を拡大し、医療系リワークとの間で「協働」ではなく「競合」も起こしています。このような厳しい状況の中、医療系リワークの存在意義が今こそ問われています。
2.「復職」という言葉の多様化
働くことの意味の変化に伴って、「リワーク=復職」支援が意味するところも「転職でもよい」「辞めてしばらくゆっくりしたい」等々、人それぞれ拡散しつつあります。時代は、社会は、企業は、そして働く人は、どのようなリワーク支援を求めているのか? さらには「リワーク」しない働き方や生き方もあり、働くことへの価値観が多様化する中で、リワーク支援の方向性をどのように決めていけばよいのか?
加えて、身体疾患や統合失調症など他疾患におけるリハビリやリワークプログラムの観点から、さらには職場保健師や主治医、リワークスタッフなど種々の専門職による視点からも、医療リワークについて再考してみたいと思います。
今回は関西で、京都ではじめて開催される、うつ病リワーク研究会の年次研究会です。京都はちょうど若葉のきれいな季節を迎えるため混雑も予想されます。どうかお早めに宿をご予約のうえ、多くの方にご参加いただけることを心よりお待ち申し上げております。